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市民参加・意志表明  ·  11月 11日, 2017年

参加民主主義の威力を三倍にする

一般市民が政治に無関心になるのは、政治家に対して幻滅を抱いているのと同時に、自分には何もできないという無力感によるところが大きいと思います。ピラミッド型の社会をイメージしていると、社会を変えるには「上からの改革」しかありません。もちろん民主主義ですから、「上からの改革」を行うには国民一人一人が選挙で一票を投じ、政権交代を通じて社会を改革するということになります。立憲民主党の枝野代表が「右か左かなんていうイデオロギーの時代じゃないんです。上からか、草の根からか。これが21世紀の本当の対立軸なんです。」と言いましたが、これは実際にどういうふうに実現すればよいのでしょうか。

 

政権党の利益のバラマキを求めてお上に政治を任せるという「お任せ民主主義」ではダメなことは言うまでもありません。選挙運動の時だけでなく、普段から社会のあり方に関心を持っている市民に政治にかかわってもらう、と考えるのは一歩前進です。党員の活動が盛んな共産党や公明党ではそうしているのでしょう。労働組合という組織票があったはずの民主党・民進党は、労働組合員の日常の活動が(もしあるなら)労働条件の改善に終始し、選挙の時だけ支持政党を応援するという形になっていたのではないでしょうか。原子力発電所をどうするかというところで、つまづいていたようです。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」だけでなく、他の様々な市民運動とも連携して、本当の草の根民主主義を築こうとするなら、立憲民主党はもう少し幅広い「市民参加」を目指してよいと思います。

 

私たちはいろいろな形で社会にかかわっています。国民・住民として、生産者・消費者として、そして、私人・生活者としてなどです。国民・住民としてかかわるのは法秩序の維持や政治決定の分野です。これは国・地方公共団体の仕事に関することで、「政府界」にかかわることと言ってもよいでしょう。生産者・消費者としてかかわるのは経済の分野です。実業界の仕事に関することです。私人・生活者としてかかわるのは文化の分野です。ここには科学・芸術などのほか、教育・医療・マスコミ・娯楽なども含めてよいと思います。生活者を知識・技能・健康によって自立させ(empowerment)、多様な価値観によって文化を活性化する「市民界(civil society)」の分野です。ある職業に従事するということは、政府界・実業界・市民界のどれか一つの中の「担い手」になることです。しかし、たとえ政治家や企業経営者などの「担い手」にならなくても、私たちは住民・消費者・生活者という立場から「参加者」となり、政府界・実業界・市民界に積極的にかかわっていくことができます。

 

意識的な住民・国民として普段から世論の形成や意志表示をするためには、デモに参加するだけでなく、今までになかったオンライン・ペティション(請願)やソーシャルメディアを使う手があります。誰でも気軽に参加できるのです。人権が公平に保護されているか、権力の座にある人々や金持ちが優遇されていないか、すなわち、平等の原則が侵されていないかがカギです。土地の利用、公的資金の運用、労働者の権利などについて特に見張る必要があります。

 

消費者として積極的に社会参加するには、安いものを求めるだけでなく、商品を意識的に選択することによって、企業に意思表示することです。自分自身の価値観に基づいて、有機栽培の野菜を買ったり、フェアトレードのコーヒーを飲んだり、税金逃れをしている企業の商品の不買運動に参加したり、あるいは銀行の投資先を吟味してたばこ産業や化石燃料産業への不支持を実行 (divestment) したりすることです。その際、企業活動の裏側を報道するメディアの役割が重要になってきます(これは市民界に属します)。実業界によって創造された富がみんなの役に立っているか、共栄・協栄の原則が重要です。

 

生活者として市民界の領域で社会に積極的に参加する場合は、自分自身にとって最も大切な事柄を取り上げ、社会に向けて自分の思いを発信し、他の志を同じくする人々と連携して社会にかかわっていけばよいのです。野鳥の観察が好きなら、環境保護運動にかかわってみましょう。老人の介護に悩んでいるなら、老人介護を支援する組織を通じて状況改善を政府や社会一般に働きかけましょう。市民界の強みは、多元主義、多様な価値観を尊重することです。自由と寛容の原則を保証しなければなりません。

 

民進党や立憲民主党の基本理念に「自由」「公正・公平」「共に支え、支えられる共生社会」などがあります。もちろん文化・政治・経済のどの分野においても「自由」「平等」「共生・友愛」は重要ですが、それがどう適用されるかが問題になります。そこで、この三理念を次のように当てはめて考えると、各分野でどんな政策が妥当であるかが見えてきます。すなわち、

 

·        自由な文化:自由・寛容を促進しない文化政策は息が詰まる。

·        平等の法制:平等に基づかない政治・法制は不満や社会不安を引き起こす。

·        友愛の経済:創造された富によって皆が豊かにならない経済政策は犯罪を助長する。

 

この三つの理念はユートピア社会を求める単なるスローガンではありません。上に述べたように、私たち一人一人が生活者・住民・消費者として積極的に社会にかかわるときに役立つ指針となるものです。このようなアプローチをとれば、参加民主主義の威力が三倍(もしかしたら、それ以上)になるでしょうし、無力感から脱して、元気に社会変革にかかわってゆけるのではないでしょうか。

 

当ウェブサイトのマーティン・ラージ著『三分節の共生社会』抄訳をもう一度ご覧ください。クラウドファンディングによる本書の出版を計画しています。ぜひ、ご意見・ご感想をお寄せください。

 

tagPlaceholderカテゴリ: 市民参加・意志表明, 立憲民主党

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社会三分節研究室・林寧志

オーストラリア、メルボルン在住

 

 

 

 

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