「社会三分節研究室」は主宰者である私、林寧志の個人サークルです。私はここ30年来シュタイナー教育にかかわってきました。その昔、新田義之氏の個人雑誌『ルドルフ・シュタイナー研究』で「社会機構の三層化」について知り、それ以来ずっとこの社会論に対する関心を温め続けてきました。かねてから、個人と社会の間のジレンマを自由な文化、平等の法制、友愛の経済として解決する社会三分節の考え方は広く一般に知られるべきものであり、市民界・政官界・実業界の三界分立は立法・行政・司法の三権分立と同様に現代社会の常識となるべきものであると考えてきました。三分節化/三層化についての文献はいくつか日本語に翻訳されていますが、残念ながらシュタイナーに関心のある人々以外にはこれまでほとんど知られておらず、社会三分節に関するまとまった日本語のウェブサイトもいまだに存在しません。そんな中で、社会三分節の考えを使って現代社会の諸問題を分析し、解決策を提示するマーティン・ラージ氏の『Common Wealth』という本が2010年にイギリスで出版されました。私はこれをぜひ日本に紹介したいと思い、2013年に一年がかりで翻訳を完成しましたが、出版する手立てがありませんでした。何もしないまま時ばかりが過ぎてゆくので、一念発起して自分でウェブサイトを立ち上げることにし、社会三分節論について紹介する一方、著者の許可のもとに『Common Wealth』の邦訳『三分節の共生社会』の抜粋をここに発表することにしました。
私は1984年にシュタイナー教師養成コースを修めるべくイギリスに渡って以来海外生活を続けており、1995年からはオーストラリアに住んでいます。自分は教師であり、また言語学にも興味がありますが、政治・経済・社会論は専門外です。外国住まいが長いため、日本の社会事情に対するコメント・解説などのブログを書くこともままなりません。そこで、英米の諸氏の著述の翻訳を中心にここに社会三分節研究として紹介します。また、社会三分節と関係が深く、シュタイナーの提唱した新しい経済学(昨今これは「associative economics」と呼ばれていますが、〝連合経済学〟というより〝連携協議経済学〟に近いでしょうか)も徐々に紹介していきたいと思います。このウェブサイトが社会三分節の考えを日本に広めるための触媒となって、社会三分節に関するオンライン・フォーラムや、社会三分節を提唱・促進する運動家たちのネットワークなどが生まれれば幸いです。