マーテイン・ラージ著、林寧志訳 © 2019 Yasushi Hayashi
『三分節共栄社会―自由・平等・互恵・持続可能性を実現する―』4の2
三分節社会は実業界・市民界・政府界がそれぞれ経済・文化・政治の領域で独自に機能することにより形成されます。市民界の興隆を描くことによって「シビル・ソサエティ」という言葉のいろいろな意味が明らかになってきます。地域に根ざした人々の集まりである住民組織、平和や持続可能な発展を提唱する文化に根ざした活動体としての市民運動、一九九九年にシアトルで現れた「私たち一般市民」というグローバルな社会的パワーとしての市民界などが含まれます。意識に目覚めた市民界が出現しつつあり、ますます多くの文化組織が社会に関与するよう市民界がリードしているのです。そして最後に、資本主義社会から移り変わる未来展望として、創造的文化という価値観を内在する「市民社会」が挙げられます。それは個々の人間の創造的な活動が地球の保護などの新しい価値観を社会に組み込むことで社会を変革し、達成されるのです。
社会三領域の間の境界線を意識化することで、日常生活を通じてすでに直感的に境界線を把握している一般の人々が、国家や文化を乗っ取るような有害な境界侵害を発見することができます。最後に社会権力の一領域が極度に発達した例として神権政治・官僚政治・金権政治の三つを描きました。
次の章では社会三分節の枠組みを使って、金で買える民主主義に乗っ取られた国家、大企業国家の状況を分析しましょう。