マーテイン・ラージ著、林寧志訳 © 2016 Yasushi Hayashi
『三分節共栄社会―自由・平等・互恵・持続可能性を実現する―』4の1
その間、非常に大切な柵が壊されている。民営化を急ぐあまり、かつて存在していた公共の場と私的な場の仕切りがほとんど無くなってしまった。学校から広告宣伝を排除すること、保健制度から私利の追求を排除すること、報道機関が所有者の傘下にある会社の宣伝媒体として使用されるのを排除することなどである。今まで保護されてきた公共の場という殻が割られとたんにそれが再び市場によって囲い込まれているのだ。 [拙訳]
ナオミ・クライン『柵と窓(貧困と不正を生む資本主義を潰せ)』1
この章のねらいは経済・政治・文化の間に境界線を設けることの重要性を明らかにすることです。その中で市民界の出現について描き、社会の各領域の指導原理とダイナミックスについての理解を深めます。本章での分析を通じて、企業が国家を乗っ取る様子、
すなわち国民の税金がいかに経営者の私的利益を援助しているかを示します。またアメリカの政軍産複合体による大企業利益の重視や、半民営化されたイギリスの鉄道制度、金融機関などの例を取り上げます。これらを通じて三領域間の健全な柵および不健全な境界侵害について分析します。この章のテーマは次のようなものです。
· 三分節社会のあらまし
· 市民社会(シビル・ソサエティー)という言葉の意味
· 資本主義社会から市民の社会へ
· 到達方法
· 境界線の重要性
注1. Fences and Windows: Dispatches from the Front Lines of the Globalization Debate, (Flamingo, 2002).(〝柵と窓:グローバリゼーション論議の前線から〟ナオミ・クライン著『貧困と不正を生む資本主義を潰せ――企業によるグローバル化の悪を糾弾する』松島聖子訳,はまの出版,2003年)